KS(ケーエス) JHA・日本手作り腕時計協会代表 時計作家 篠原康治さんの手作り腕時計
独創的なデザインと手の込んだ作りに、誰もが見惚れてしまう ―― 日本の手作り腕時計の先駆者であり、腕時計ブランド“KS(ケーエス)”を手がける時計作家・篠原康治さん。スチームパンクの世界観を時計に落とし込み、時計自体が今にも動き出しそうな機械を思わせる「Lost Future」シリーズ、普段使いはもちろん和装にも合う「和時計」シリーズなど、「伝統と斬新さ―この相反する概念の融合」をコンセプトに、バリエーション豊かな手作り腕時計を制作されています。
篠原康治さんが手作り腕時計の制作を始めるきっかけとなったのは、香港の小さな腕時計工場での出会い。大学卒業後に就職した商社時代、たまたま担当となった香港に出張し、ある腕時計組立工場に部品販売で訪れた時のこと。そこで目にしたのは、こじんまりとした部屋で、せっせと時計の組立をしている5、6人の人たちの姿。腕時計を作るには大規模で専門的な設備が必要だと思い込んでいた篠原さんは、その光景を見た瞬間、腕時計作りが自分にもできる身近なものに感じたそうです。
もともと海外出張のたびに腕時計を買い集めるなど、大の腕時計好きだった篠原さんは、この香港での出会いから半年間、腕時計作りに没頭。29歳の時、東京・吉祥寺に小さな腕時計工房を構え、紙や真鍮、シルバーなど、様々な素材で独創的な腕時計を制作。次第に雑誌やテレビなどのメディアの注目を集めるようになり、篠原さんの元には、時計作家を目指し、弟子入り志願の若者たちも訪れるようになります。
1997年には、時計制作技術の習得や部品供給などの作家活動を支援するため、JHA(Japan Handcraft-Watch Association・日本手作り腕時計協会)を設立。クラフトカフェで取り扱いさせていただいている腕時計ブランド、渡辺工房の渡辺正明さん、JOIE INFINIE DESIGN(ジョイ アンフィニィ デザイン)の大護慎太郎さん、ARKRAFT(アークラフト)の新木秀和さん、ipsilon(イプシロン)のヤマダヨウコさんは、篠原さんから時計作りを学び、時計作家として独立された方々です。
現在も、自らの作品も制作しつつ、後進の育成にも尽力。時計作家を志す若者たちには「師匠」と慕われ、手作り腕時計の世界の発展のために活躍されています。